はじめに
目的とは、課題を解決することです。
何かが使いにくい。
何かが伝わりにくい。
何かが分かりにくい。
世の中には、様々な「〜しにくい」があります。
その“しにくさ”を、どうすると“しやすく”できるか。
-
使いやすくする
-
分かりやすくする
-
伝わりやすくする
-
行動しやすくする
こういったものが、本来の目的になります。
これは、AHD式デザイン思考の根幹にもなっています。
何かが“しにくい”。
だから、それを“しやすくする”。
この対比こそが、AHD式デザイン思考の基本的な考え方です。
つまり、見た目を整えることが先にあるのではなく、
「何が成立しにくくなっているのか」
を見つけ、
「どうすると成立しやすくなるのか」
を考える。
そこから、設計や判断が始まっていきます。
つまり、課題が存在しなければ、そもそも目的は発生しません。
ただし、課題というものは、
「何かがしにくい」 「何かが不足している」
というものだけではありません。
-
こうなりたい
-
こうありたい
-
こう見られたい
-
こういう状態を作りたい
という、“理想”や“願望”も、目的の起点になることがあります。
例えば、
-
ブランド価値を高めたい
-
信頼感を作りたい
-
高級感を持たせたい
-
世界観を統一したい
といったものです。
ただし、こういった願望も、
「なぜ、それが必要なのか」
を掘り下げなければ、単なる自己満足になっていきます。
今回は主に、
「何かがしにくい」
という、“課題解決”としての目的を中心に扱います。
第1章|目的がズレると、判断基準が消える
しかし実際には、ここがズレていくことがあります。
例えば、
-
おしゃれにしたい
-
かっこよくしたい
-
センス良くしたい
-
インパクトを出したい
こういったものが、“目的”として扱われ始めることがあります。
もちろん、そういった要素そのものが悪いわけではありません。
ただ、それ自体を目的化してしまうと、本来解決するべき課題から、少しずつズレていきます。
そして、目的が曖昧になると、“判断基準”そのものが消えていきます。
本来、
-
使いやすくなったか
-
分かりやすくなったか
-
課題が改善されたか
で判断するべきなのに、
-
なんとなく好き
-
なんとなく嫌い
-
こっちの方がおしゃれ
-
自分はこっちが好み
という、“主観”で物事が決まり始めます。
そうすると、
「ああしたい」 「こうしたい」 「私はこっちが好き」
というものが、本来の目的より優先され始める。
すると最終的に、
「やってみたけど、なんだかよく分からない」
という状態になっていきます。
この章の要点
ここで重要なのは、
「好きか嫌いか」
ではなく、
「目的達成に対して、何が必要か」
です。
もちろん、主観や感性そのものを否定したいわけではありません。
ただし、
-
なぜそれが必要なのか
-
なぜその表現なのか
-
なぜその空気感なのか
を、目的と接続せずに判断してしまうと、
最終的に、
「何を成立させたいのか」
がブレていきます。
だからこそ重要なのは、
感覚だけで決めることではなく、
“その判断が、目的にどう繋がっているか”
を整理することです。
第2章|本当に、その課題は課題なのか
では、目的を明確にするためには、どうしたら良いのか。
それは、何が問題なのかを明確にすることです。
-
何が課題なのか
-
何がネックなのか
-
何が成立を妨げているのか
これを、確実に定義しなければいけません。
例えば、
「分かりにくい」
という問題があったとします。
しかし、“分かりにくい”にも色々あります。
-
文章が長いのか
-
回りくどいのか
-
順番が悪いのか
-
情報量が多すぎるのか
-
そもそも説明不足なのか
原因によって、解決方法は全く変わります。
つまり、
「何が問題か」
を間違えると、
「どう解決するか」
も間違っていくということです。
さらに重要なのは、
“本当に、それを課題として扱っていいのか”
という視点です。
世の中には、“問題っぽく見えるもの”がたくさんあります。
しかし実際には、
-
優先順位が低い
-
本質原因ではない
-
表面的な症状
というケースも多い。
だからこそ、「なぜ」を掘り下げる必要があります。
これは、トヨタ系列でも有名な、「なぜを5回繰り返す」という考え方にも近いです。
なぜ売上が上がらないのか。
なぜ伝わらないのか。
なぜ離脱するのか。
その理由を掘り下げていくと、最初に見えていた問題とは、全く別の課題に辿り着くことがあります。
例えば、
「チラシを作ろう」
と思っていたとしても、掘り下げていくと、
「そもそも、チラシではない」
というケースもあります。
つまり、本当に必要なのは、
「何を作るか」
ではなく、
「何を成立させたいか」
という視点です。
この章の要点
問題を間違えると、 解決方法も間違っていきます。
重要なのは、
「何を作るか」
ではなく、
「何を成立させたいか」
です。
そして、
“問題っぽく見えるもの”
を、そのまま課題として扱わないことも重要です。
本当にそこが原因なのか。
本当にそこを改善する必要があるのか。
そこを掘り下げなければ、 手段だけが増えていきます。
第3章|目的は、“誰に対して”成立させるのか
さらに、目的を考える上で重要なのが、
「誰に対してのものなのか」
という視点です。
例えば、サービスを広めたい場合。
そのサービスを見る人は、
-
どんな状況で見るのか
-
どんな温度感で見るのか
-
どんな心理状態なのか
によって、受け取り方が変わります。
発信する側は、熱量を持っています。
しかし、受け取る側は、非常に冷めた状態で見ることも多い。
勢いのあるコピーを書いたとしても、見る側は、
-
通勤中かもしれない
-
疲れているかもしれない
-
興味が薄いかもしれない
そういった状態で情報を見ることがあります。
だからこそ、発信する側の自己満足になってはいけません。
ただし、この“対象”や、“人によって見え方が違う”という話については、後の「対象」「認知」「心理」でも詳しく扱います。
この章の要点
目的は、
“作る側”
ではなく、
“受け取る側”
で成立しなければ意味がありません。
発信する側は、 背景や熱量を知っています。
しかし、受け取る側は、 その前提を知らない状態で情報を見ます。
だからこそ、
-
状況
-
温度感
-
心理
-
認知状態
まで考える必要があります。
第4章|やる前に、成立条件を想定する
そういった状況で考えると、
「好きか嫌いか」
という判断軸は、目的を成立させる上では、あまり重要ではなくなってきます。
もちろん、感性や好みそのものを否定したいわけではありません。
ただ、
-
自分はこういうのが好き
-
自分はこういう雰囲気が嫌い
-
なんとなくこっちの方が良い
という判断だけで進めてしまうと、本来の目的から、少しずつズレていきます。
特に、参加者同士の主観だけで物事が決まり始めると、
「何を成立させたいのか」
よりも、
「誰の意見が強いか」
で方向性が決まりやすくなります。
すると、途中までは盛り上がっていても、完成すると、
「結局、何がしたかったのか分からない」
という状態になっていきます。
だからこそ重要なのは、
やってみてから考えることではなく、
やる前に、
-
どんな誤解が起きるか
-
どこで離脱するか
-
何がノイズになるか
-
何が目的をズラすか
を、できる限り想定しておくことです。
ただし、この“想定”や、“人によって見え方が違う”という話は、後の「認知」「文脈」「構造」でも詳しく扱います。
この章の要点
成立する人は、
「作ること」
より前に、
-
何が誤解されるか
-
どこでズレるか
-
何がノイズになるか
を先に考えています。
つまり、
“成立条件を先に設計している”
ということです。
そして重要なのは、
「なんとなく良さそう」
ではなく、
“なぜそれが必要なのか”
を説明できる状態にしておくことです。
第5章|目的とは、“成立条件”を定義すること
目的とは、単に「やりたいこと」ではありません。
何を成立させたいのか。
誰に対してなのか。
どんな課題を解決したいのか。
なぜ、それが必要なのか。
そして、どういう状態になれば、「成立した」と言えるのか。
そこを定義することが、とても重要なのです。
また、ここまで読んでいただくと分かると思いますが、
“目的を設定する”
という段階だけでも、
-
課題
-
対象
-
状況
-
認知
-
心理
-
情報
-
関係性
など、様々なものを見なければいけません。
つまり、
“何かを成立させる”
ということは、
単体ではなく、 関係性を見るということです。
そして、
広く、深く、構造として見る。
それが、この「成立させる思考術」全体のテーマになっていきます。
この章の要点
目的を設定するだけでも、
-
課題
-
対象
-
状況
-
認知
-
心理
-
判断基準
-
情報
-
関係性
など、様々なものを見なければいけません。
つまり、
“何かを成立させる”
ということは、
単体ではなく、 関係性を見るということです。
そして、
広く、深く、構造として見る。
それが、この「成立させる思考術」全体のテーマになっていきます。
補足|目的を整理する時のチェック項目
目的を整理する時は、以下のチェック項目を使って、実際に目的設定を精査してみてください。
ただし、すべてを順番に埋める必要はありません。
-
見落としがないか
-
漏れがないか
-
主観化していないか
-
本当に成立する方向へ向かっているか
を確認するために、
“気になった項目を使う”
という使い方で大丈夫です。
重要なのは、チェック項目を埋めることではなく、
「何を成立させたいのか」
を整理することです。
1|そもそも、何を成立させたいのか
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何を解決したいのか
-
何を変えたいのか
-
どんな状態になれば成功なのか
-
何が改善されたら成立と言えるのか
-
目的は「作ること」になっていないか
2|その課題は、本当に課題として成立しているか
-
本当に困っていることなのか
-
表面的な症状ではないか
-
別の原因が隠れていないか
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優先順位は高いのか
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「なんとなく問題っぽいもの」を課題化していないか
3|なぜ、それが起きているのか
-
なぜ分かりにくいのか
-
なぜ伝わらないのか
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なぜ使いにくいのか
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なぜ売れないのか
-
なぜ離脱するのか
4|その手段は、本当に必要か
-
本当にチラシが必要か
-
本当にSNSが必要か
-
本当に動画化が必要か
-
本当に情報追加が必要か
-
本当にデザイン変更が必要か
5|誰に対して成立させたいのか
-
誰のためのものなのか
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誰が使うのか
-
誰が見るのか
-
誰が判断するのか
-
誰が行動するのか
6|発信側と受け手側の温度差を理解しているか
-
発信側だけが盛り上がっていないか
-
内輪感が強くなっていないか
-
相手は冷めた状態で見る前提になっているか
-
相手は背景情報を知らない前提になっているか
7|判断基準が主観化していないか
-
「好き嫌い」で決まっていないか
-
「なんとなく」で進んでいないか
-
「偉い人の意見」で決まっていないか
-
目的と関係ない判断になっていないか
8|“良く見えること”が目的化していないか
-
おしゃれが目的になっていないか
-
かっこよさが目的になっていないか
-
センスの良さが目的になっていないか
-
見栄えだけを優先していないか
9|部分最適になっていないか
-
デザインだけ整っていないか
-
情報だけ増えていないか
-
SEOだけ強くなっていないか
-
SNSだけ伸ばそうとしていないか
-
単体では良いが、全体が噛み合っているか
10|やる前に、成立条件を想定できているか
-
何を誤解されるか
-
どこで離脱するか
-
何がノイズになるか
-
どこで迷うか
-
何が不安になるか
これらは、
“正解を探すためのチェック”
ではありません。
「成立条件を見落としていないか」
を確認するための視点です。