はじめに

何かを成立させようとする時、

「誰のためなのか」

を考えることは非常に重要です。

しかし実際には、

  • 自分たちが伝えたいこと

  • 自分たちが作りたいもの

  • 自分たちが良いと思うもの

を優先してしまい、本当に見るべき相手が見えなくなってしまうことがあります。

そして、そのズレは後工程になればなるほど大きな問題になります。

デザイン、広告、営業、商品開発、組織運営。

どんな分野であっても、最初に考えるべきことは、

「誰のためか」

です。

ただし、それは単純なターゲット設定の話ではありません。


第1章|「誰のためか」より、「誰の課題か」

マーケティングや企画の話になると、

「ターゲットを決めましょう」

という話がよく出てきます。

そして、

  • 年齢

  • 性別

  • 職業

  • 年収

  • 家族構成

  • 趣味

などを整理していきます。

これは間違いではありません。

しかし、それだけでは十分ではありません。

なぜなら、

「誰のためか」

だけを考えると、どうしても発信側の都合が入りやすくなるからです。

本当に重要なのは、

「誰の課題か」

です。

その人は何に困っているのか。

何ができなくて困っているのか。

どんな不満を抱えているのか。

どんな状態を改善したいと思っているのか。

そこが見えていなければ、どれだけ立派な商品やサービスを作っても、相手には響きません。

デザインも同じです。

誰かの課題を解決するために存在しているからこそ、意味があります。

人を見ることも大切です。

課題を見ることも大切です。

そしてさらに、その課題を抱えている人が今どんな状態にいるのかを見ることも大切です。

どれか一つではなく、それぞれを見ながら関係性を整理していくことで、本当に向き合うべき相手が見えてきます。


この章の要点

「誰のためか」だけではなく、「誰の課題か」を考えることで、本当に向き合うべき相手が見えてきます。


第2章|相手の状態を見なければ、課題は見えない

ペルソナは必要です。

例えば、

  • 年齢

  • 性別

  • 職業

  • 年収

  • 家族構成

  • 趣味

  • 価値観

などを整理することで、

どんな人に向けているのかが見えやすくなります。

また、考慮漏れを減らすためにも有効です。

だからこそ、多くのマーケティングや企画ではペルソナ設計が行われています。

しかし、それだけでは十分ではありません。

なぜなら、同じ人物であっても、その時の状態によって課題は変わるからです。

例えば、

同じ40代の経営者でも、

  • 売上が伸びている人

  • 売上が落ちている人

では、見えている景色が違います。

同じサービスを提案しても、響く言葉は変わります。

つまり、

ペルソナは属性を見るものです。

そのためには、まず相手がどんな課題を抱えているのかを見なければいけません。

さらに付け加えるなら、その課題を抱えている人が、今どんな状態にいるのかを見ることが大事です。

ペルソナは、その人の属性を知るためのもの。

課題は、その人が何に困っているのかを知るためのもの。

状態は、その人が今どこにいるのかを知るためのものです。

課題を見つけるためには、そのすべてを見る必要があります。

さらに言えば、状態を見るということは、伝える手段にも影響します。

忙しく時間のない人なのか。

じっくり比較検討している人なのか。

まだ課題に気付いていない人なのか。

すでに課題を認識している人なのか。

それによって、

  • SNSが良いのか

  • Webサイトが良いのか

  • 動画が良いのか

  • パンフレットが良いのか

  • 直接説明が良いのか

まで変わってきます。

つまり状態を見ることで、

  • 何を伝えるか

  • どの順番で伝えるか

  • どの媒体で伝えるか

といった構成全体が見えてくるのです。


この章の要点

課題を見るためには、属性だけではなく「今どんな状態なのか」を見る必要があります。


第3章|発信する側と受け取る側では熱量が違う

発信する側は当事者です。

だからこそ、

  • こうした方がいい

  • ああした方がいい

  • これは絶対に良い

と、様々なアイデアを出しながら、熱量の高い状態で物事を進めていきます。

しかし、受け取る側は違います。

初めてその情報を見る人も多く、発信する側ほどの熱量はありません。

そのため、作る側としては「すごく良いものができた」と思っていても、実際に見てもらうと、

「よく分からない」

という反応になることがあります。

この温度差は、発信やデザインだけではなく、組織運営や営業、商品開発など様々な場面で起こります。

さらに重要なのは、熱量だけではありません。

発信する側と受け取る側では、前提知識も違います。

発信する側は、

  • なぜそうなったのか

  • どんな経緯があったのか

  • 何を目的にしているのか

を知っています。

しかし、受け取る側はその過程を知りません。

にもかかわらず、

「これくらいは分かるだろう」

「説明しなくても伝わるだろう」

という思い込みが発生します。

すると、

社内では伝えたつもり。

社外では説明したつもり。

という状態になります。

しかし実際には、相手は違う景色を見ています。

持っている情報も違う。

経験も違う。

知識も違う。

だから同じ言葉を見ても、同じ解釈になるとは限りません。

伝えるとは、自分が知っていることを話すことではありません。

相手との認識差を埋めていくことなのです。

※熱量や認知のズレについては、今後の回でも改めて触れていきます。


この章の要点

発信する側と受け取る側では、

  • 熱量

  • 前提知識

  • 見えている景色

が違います。

その差を理解した上で伝えることが重要です。


第4章|前提知識を共有することは悪ではない

ここまで読むと、

「前提知識を共有した状態で話してはいけない」

と思うかもしれません。

しかし、それは少し違います。

前提知識を共有すること自体は悪いことではありません。

例えば、

  • 専門家向けの話

  • 社内向けの話

  • 長年の利用者向けの話

であれば、ある程度の前提知識を共有した状態で進めた方が、むしろ話は早くなります。

問題なのは、

共有されていると思い込むことです。

本当にその知識が共有されているのか。

本当にその言葉が通じるのか。

本当にその状況を理解しているのか。

そこを確認せずに進めると、認識のズレが生まれます。

また、

  • 初心者向け

  • 一般向け

  • コアユーザー向け

  • 専門家向け

では、持っている知識量も違います。

専門家向けなら専門用語を使っても問題ありません。

しかし、一般向けに同じ説明をすると、理解されないことがあります。

つまり、

前提知識共有が悪なのではなく、

「誰に向けているか」

との整合性が重要なのです。

逆に言えば、

誰に向けているのか。

どこまで知っている人なのか。

そこを理解した上で前提知識を共有することは、有効な伝達手段になります。


この章の要点

前提知識を共有することは悪ではありません。重要なのは、本当に共有されているかを見極めることです。


第5章|「誰のためか」を考えるとは、関係性を見ること

ここまで、

  • 課題

  • 状態

  • 熱量

  • 前提知識

について整理してきました。

そして見えてくるのは、

どれか一つだけを見れば良いわけではないということです。

人を見る。

課題を見る。

状態を見る。

前提知識を見る。

熱量を見る。

媒体を見る。

環境を見る。

それぞれは独立して存在しているわけではありません。

すべてが関係しています。

例えば、

同じ人でも状態が変われば課題は変わります。

課題が変われば伝え方も変わります。

伝え方が変われば媒体も変わります。

媒体が変われば必要な情報量も変わります。

つまり、すべては関係しています。

だからこそ、一つの方向だけを見て判断してはいけません。

物事を成立させるためには、

様々な方向から見てみること。

全体を俯瞰して見ること。

そして、細部を丁寧に見ること。

その両方が必要になります。

全体だけ見ても成立しません。

細部だけ見ても成立しません。

大切なのは、

全体と部分を行き来しながら関係性を見ることです。

「誰のためか」

を考えるとは、単純にターゲットを決めることではありません。

相手を理解すること。

そして、その相手を取り巻く関係性を見ることです。

自分たちが伝えたいことではなく、

相手が理解しやすい形へ整理していく。

そして、その人が抱えている課題に対して、本当に必要なものを届けていく。

その積み重ねが、伝達を成立させていくのです。


この章の要点

「誰のためか」を考えるとは、人・課題・状態・前提知識などの関係性を見ながら、全体と部分の両方を見ることでもあります。


補足|チェック項目

  • 誰のためかが明確か

  • 誰の課題かまで見えているか

  • 相手の状態を把握しているか

  • その状態に合った媒体を選んでいるか

  • 発信側の思い込みが入っていないか

  • 前提知識を共有していると思い込んでいないか

  • 社内目線だけになっていないか

  • 相手の見ている景色を想像できているか

  • 相手の理解度に合わせた伝え方になっているか

  • 一つの視点だけで判断していないか

  • 全体と部分の両方を見られているか