デザイン思考は問題を見つける力
SNSでも日常でも、「どうしてそんな行動をするのか」「考えられない」と感じる瞬間があります。
その理解できない出来事を拒絶で終わらせず、背景や理由を“想像し直す”ためのデザイン思考を紹介します。
他者の合理を見つけ、違いを新しい視点へと変える方法を解説します。
第一章:違いを拒まず、構造として捉える
私たちはつい、理解できないものを「間違っている」と判断してしまいます。しかし、他者の言動には、必ずその人なりの理由や文脈があります。
たとえば、意見が噛み合わない同僚。話をすぐ遮る上司。SNSで見かける極端な主張。それらを単に「考え方が違う」と切り捨ててしまえば、そこにある構造は見えてきません。
デザイン思考の本質は、「なぜそう考えるのか」を探ること。表面の言葉や態度ではなく、その奥にある背景・目的・前提を見に行く姿勢です。
違いは対立ではなく、構造の違い。意見のズレを整理することは、相手を“理解する”ことと同じです。
他者の中にある合理を見つけようとする姿勢が、思考を止めずに深めるための最初のデザインです。
第二章:「考えられない」を翻訳する
「どうしてそんなことをするのか」「なぜそんな考え方をするのか」──そう感じる出来事は、日常のあちこちにあります。
その瞬間、私たちは“感情”で反応してしまいがちです。驚き、怒り、呆れ、距離をとる。けれど、そこで思考を止めてしまえば、理解の可能性も同時に閉ざされてしまいます。
「考えられない」を“翻訳”してみる。それは、相手の立場や経験を一度自分の中で再構成してみること。
なぜその選択をしたのか。どんな状況がそうさせたのか。どんな感情が背後にあるのか。
その人にとっての“合理”を想像してみると、理解できないと思っていたことにも、“その人なりの筋道”が見えてきます。
翻訳とは、同意することではありません。ただ、違う言葉を自分の中で解釈し直すこと。
デザインも同じです。相手の感情や行動を、自分の理解できる言葉や形に置き換える思考。それが「考えられない」を「考えてみる」に変える力です。
第三章:違いが新しい視点を生む
「自分と違う考え」に出会うことは、時に不快で、面倒で、理解に時間がかかります。けれどその“違い”は、思考を広げるためのもっとも確かな入口です。
同じ価値観の中にいると、意見は揃い、摩擦は減ります。けれど同時に、発想の幅も狭まっていきます。デザインにおいて、違いは“誤差”ではなく、“発想の余白”です。
他者の見方を「間違い」ではなく「別の構造」として見る。それだけで思考の重心が変わります。
たとえば、ある人は「早く決めたい」と言い、別の人は「もっと考えたい」と言う。そのズレの中には、“スピードと精度の関係”という構造が潜んでいる。
違いを否定ではなく、関係としてデザインする。その視点を持つと、対立していた要素が補い合うように動き始めます。
考え方のズレは、発想の起点。理解できないことの中にこそ、まだ見ぬ視点が眠っています。
結論:理解するとは、想像し直すこと
理解とは、相手の考えを受け入れることでも、同意することでもありません。
一度、自分の見方を脇に置いて、「なぜそう感じるのか」「なぜそう行動するのか」をもう一度、想像し直してみること。
考えられないと思う出来事に出会ったとき、その“わからなさ”の中に、自分とは違う前提や経験があると想像してみる。
それだけで、思考の重心が少し変わります。
想像し直すことは、世界を広げる行為です。自分の視点が揺らぐことで、他者の視点に新しい輪郭が見えてくる。
デザインもまた、そうした想像の連続です。誰かの感情や目的を受け止め、自分の言葉や形で再構成していく。
つまり、デザインとは“想像の翻訳”であり、理解するとは、世界をもう一度描き直すこと。
「考えられない」を「考えてみる」に変えること。それが、人を理解し、世界をデザインするためのもっとも静かで確かな力です。
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