デザイン思考とは、問題を解く力ではなく“問題を見つける力”です。

観察し、整理し、言葉にして、小さな改善を積み重ねることで、

日常の違和感を発想へ変えていく。

A HIRAGADESIGNでは、デザインを「思考の型」として捉え、

問題発見から価値創造へとつなげる方法を提案しています。

第一章：問題を見つける“目”を持つ

デザイン思考の第一歩は、「つくる」ことではなく「気づく」ことです。

問題は、特別な場所にあるわけではありません。それは日々の仕事の中や、何気ない生活の中に静かに潜んでいます。

たとえば、使いにくい資料フォーマット。意味が伝わりにくい社内メール。手間の多い業務フロー。こうした“少し気になる違和感”の中にこそ、デザインが関われる余地が隠れています。

「これでいいのかな？」と感じた瞬間に、小さなメモを残す。「なぜそう感じたのか」を、言葉で説明してみる。それだけで、思考は“問題を見つける目”に変わっていきます。

デザイン思考とは、課題を発見するための感度を高めること。センスではなく、観察の積み重ねで磨かれる力です。

見逃さず、気づき、言語化する。その繰り返しが、すべてのデザインの出発点になります。

第二章：小さな改善が、大きなデザインをつくる

問題に気づいたら、次は“少し良くする”ことを考えてみます。大きく変えなくても構いません。小さな改善が積み重なることで、全体の質は静かに変わっていきます。

デザインとは、一度で完璧を目指すものではなく、小さな仮説と検証の連続です。

たとえば、言葉を一行減らす。
説明を順番を変えてみる。
写真を入れ替えてみる。
それだけでも伝わり方は変わります。

改善とは「やり直し」ではなく、“もっと良くなる余地を探す思考”です。大切なのは、完璧さよりも前に進める柔らかさ。気づいたことをすぐに試してみる姿勢が、結果として“デザインの精度”を育てます。

デザインとは、センスやひらめきではなく、考え抜かれた小さな積み重ね。日常にある「ちょっと変えてみよう」が、やがてブランドや事業全体を支える力になります。

第三章：言葉で整理する力

デザイン思考の根底にあるのは、言葉で整理する力です。

どれほど良い考えでも、言葉が曖昧だと伝わりません。そして、言葉にできない考えは、形にもできません。

デザインとは、形を作る前に、

「何を伝えたいのか」「なぜそれを伝えるのか」を言葉で明確にするプロセスです。短い言葉で伝えられるかどうかは、思考の整理度を映します。

そして、その言葉を誰にでも説明できるようにしておく。そのための3つの視点があります。

　①なぜそう言えるのか（背景・理由）
　　根拠を持つことで言葉が説得力を持つ。

　②どんな価値があるのか（目的・意味）
　　相手にとっての利点を整理する。

　③どう実現するのか（方法・行動）
　　実際に動くための道筋を描く。

この3つを簡潔に説明できる言葉は、思考の軸が整っている証拠です。短く、正確に、温度を持って伝える。

その訓練が、デザインに深みを与えます。

第四章：伝えるメディアとトーンを整える

デザインとは、考えを“形に翻訳する”仕事です。同じ内容でも、伝える相手や場面によって、適切なトーンや方法は変わります。

たとえば、Webサイトでは論理的に。SNSでは軽やかに。パンフレットでは温度を持って。どんなメディアでも、伝える目的はひとつ。「相手に届く形に整える」こと。

だからこそ、表現の見た目を整える前に、「誰に、どんな状態で、どう伝えるのが自然か」を考える。それが、トーン設計の第一歩です。

トーンとは、声のようなもの。強く言うべきか、静かに語るべきか。その判断には“相手の温度を感じ取る感性”が欠かせません。

デザインは、言葉や形を通して行うコミュニケーション設計です。どのメディアでも、そこに「らしさ」と「誠実さ」があれば、それはもう立派なデザインです。

第五章：問題の深掘りとソリューションの考え方

表面の問題を解こうとすると、いつの間にか“症状”だけを直してしまうことがあります。

デザイン思考では、その一歩奥にある“構造”を見ます。

たとえば、「集客が弱い」という課題があるとき、本当に必要なのは“集客の手法”ではなく、“誰に、何を、どう伝えているか”という構造の見直しです。

問題を深掘るとは、現象ではなく関係を整理すること。どの部分が原因で、どこに摩擦が生まれているのか。それを見える形に整えることが、すでに半分の解決につながります。

そしてソリューションを考えるとき、多くの人が“足す”ことを選びます。しかし本当に機能するデザインは、「削ぎ落とすこと」で鮮度を取り戻すものです。

情報を減らし、言葉を短くし、形を整える。必要なものだけを残すことで、伝わり方が変わります。

問題とは“複雑さ”であり、デザインとは“整理”です。

だからこそ、デザイン思考は、見た目ではなく構造を美しくする力。それが最も根源的な「解決のかたち」です。

結論：デザインは、問題を見つける思考

デザインとは、問題を解く力ではなく、問題を見つける思考です。

見た目を変えることよりも、「なぜうまくいっていないのか」「どこを整えるべきか」を見抜くこと。その感度こそが、デザインの本質です。

デザイン思考は、日常の中で育てられます。気づいたことをメモに残し、言葉を短く整え、小さな改善を繰り返す。

それは特別な訓練ではなく、考える習慣を持つことに近いものです。

色や形はその結果として生まれるものであり、デザインとは“意味を整えるプロセス”の総称です。

つまり、デザインとは、思考と観察、言語化と改善のすべてを含む行為。そこにあるのは、センスではなく構造。

ひらめきではなく、問い。そしてその問いを重ねる力が、経営やブランドを確かに強くしていきます。